塩をつくる。塩でつくる。

海岸に打ち上げられた漂流物を集めたり観察することが好きです。収集歴(=海岸を歩いた日々)は20年以上。

ある日の種差海岸でいつもの海を前にして、ふと「海水から塩をつくってみよう」と思いました。「つくってみよう」というより「この僕が、なぜ今までつくっていなかったのだろう」という方が、そのときの感情を表すのに相応しいかもしれません(笑)。

塩づくりは、不純物を取り除いた海水を煮詰める単純な作業ではありますが、持ち帰ったポリタンク4個分の海水を塩にするには数日かかりました。

完成した塩は、もちろんアートの素材に。アートイズで子どもたちとソルトペインティングを行いました。紙に木工用ボンドなどの接着剤で絵を描き、塩を振りかけたら、紙を傾けて余分な塩を落とします。接着剤に付いた塩を狙ってチョンチョンと色付けしていくと、塩を伝って色水が染み込んでいきます。色水は紙にこぼれず塩の上だけに広がります。それは、塩に水を吸収する力があるから。料理のときにきゅうりを塩でもむと水が出てくるアレです。

きらきらと立体的に浮き上がるマチエール(絵肌)も、独特でとても美しいんですよ。

太平洋・日本海・津軽海峡、3つの海に囲まれている青森県。塩っからいものを好むがゆえに短命県日本一ともいわれる青森県。『塩』は、いろいろな意味で僕たちの身近な存在です。

遊びの中から芽生える好奇心を大切に、アート体験を通して素材の化学的特性や地域について学ぶ。その学びのヒントは、いつもの海にありました。

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PROFILE

佐貫巧(さぬきたくみ)

静岡県静岡市生まれ、2013年に青森県八戸市へ移住。2018年からは、青森県おいらせ町に住まいを移す。アーティスト、八戸学院大学短期大学部幼児保育学科 准教授、現代芸術教室「アートイズ」主催。
2014年に開講した「アートイズ」では、八戸市美術館や十和田市現代美術館の教育普及プログラムに関わる。現代アート展「インシデンツ」を企画運営し、アーティストとして国内を中心に多数展覧会に参加。
趣味は「あお(青・碧・蒼)いもの」集め。好きな食べものは、シーチキン・ザーサイ・ティラミス。

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