「デザイナーの仕事」とは?

岩井:会場の方から、デザインの仕事は、媒体をデザインする仕事だと思っていました。あらためてデザイナーの仕事とは何かについて教えていただきたいですという質問がきています。

澁谷:それを教えていただきたい。一緒に考えようみたいなところはあるんですけど。これは、全部なんだよね。今回『東北デ、』をスタートしたときに吉野さんが掲げてくれた「デザイン百姓」というキーワードがかなり真ん中にあります。消防団も草刈りもばあちゃんとの茶っこのみも、全部ひっくるめて世の中を気持ち良くしようみたいなのは、そんな気持ちは共通としてはあるのかな。

吉野:デザインしたものを納品する、というよりは、相手の事業とか、やりたいことが成功して繁栄していったりとか、そっちに協力するみたいなところが共通しているところだと思うんですけど。

澁谷:今回「デザイン百姓」というテーマで、みんなから普段やってることを書き出してもらったんですよ。西山さんは神社の草刈りするんですか?

西山:しますね。私が住んでいる行政区で管理している神社の草刈りを毎年夏にみんなで。私は草刈り機は使えないので鎌持って……

会場では全デザイナーのワークスの一部を展示。写真は西山さんのブース。

澁谷:佐々木さんは、60代以上のお姉さま専用ホスト(笑)

佐々木:いろんなお姉さまがいらっしゃるので、その方のお話をとことんうかがうっていうお仕事してます。

西山:夜の帝王……(笑)

佐々木:八戸って仙台に次いで東北で飲み屋の密度が高いまちなんですよ。新聞社に勤めていた頃に、どこに行くとおいしいのが食べられる? とか、どこ行けばいいというのが僕に相談がくるようになって、逐一答えていたら、呼ばれるようになりました(笑)

澁谷:髙木さんは高校生にデザインも教えてるんですね?

髙木:いろんな職業の方が高校生に自分の仕事を説明するという授業で。デザインと一見関係なさそうな仕事でいうと、仕事というか……僕動画もつくったりするんですけど、そのキャラクターの声を僕がやったりとか。igokuのマスコットキャラクター「いごくん」が、シニアボランティアポイント制度を説明するという動画を考えたときに、これ声誰やるの? という話になって、自分でやるしかないってなって。

澁谷:(笑)。こういうしょうがなさあるよね。

髙木:ほんとになんでも屋ですよね。写真も撮ったりしますし。

横塚:声誰やるの問題私もあって、玉ねぎの栽培を推進する動画があるんですけど、ナレーションを入れたいって言われて、そんな予算ないし、これに誰が声を入れてくれるんだってなって、私が「宮城県……」ってナレーション入れるっていうのがありました。

吉野:いいかも。もう1回。

横塚:宮城県……

一同:(笑)

阿部:イベントの司会を急遽頼まれてしゃべることも多いですね。

澁谷:阿部さんに取材にうかがったときに、遠野に来てからはじめてのぼり旗を立てたっておっしゃっていましたよね。普通デザインしたらあとよろしくってなるけど。

阿部:のぼりってこんな風に立てるんだっていうのを、市役所の方に教わりながら。

澁谷:どうやってこのグラフィックのデザインが役に立つかって、意外と知らないデザイナーっているんじゃないかな。吉野さんの事務所も特徴ありますよね?

吉野:前の会社で心を病んでしまい、僕の事務所に遊びがてら昼飯つくりに来た人がいたんですけど、僕の事務所もちょっと忙しくなってきたときだったので、じゃあ働けばいいじゃんって(笑)。一回傷ついた人が仲間だったり、スタッフになっている感じが多いですね。それでチームになっている。そういう人と組む方がなんかいいですよね。

澁谷:吉野さんの事務所はそういう空気があるよね。

吉野:社会福祉デザイン事務所みたいな。

一同:(笑)

吉野さんのブース。

吉野:復帰するためのきっかけをつくる。デザインとか、この事務所を通して社会というフィルターにもう1回チャレンジするみたいな感じになっているかな。昼はみんなで自炊をしますね。

澁谷:いいよね。

吉野:地域の農家さんからもらいものが多かったり、食品のパッケージでサンプルをもらうケースも多いので。

澁谷:仲間というと、髙木さんのigokuのスタッフについて聞いてみたいです。

髙木:igokuは、いわき市地域包括ケア推進課の猪狩さんという職員の方から僕に話がきたところから始まったんですけども、話していく中でポスターだったり冊子だったりこういうものをつくりましょうということが具体的になってきたときに、じゃあ文章誰書くの? とか、印刷物どこに頼むの? とか、もっと仲間が必要だとなって、いわき市内でライターの仕事をしている友達とか映像撮ってる友達がいまして、猪狩さんを紹介したら、この取り組み自体おもしろそうだし、僕たち世代がやるべきことだよね、とみんなで共感して。当時の行政のチームと、僕たち民間のフリーランスのチームで、igoku編集部というクリエイティブチームをつりました。ただ、役所は異動がありますので、igokuを立ち上げた当時の行政のメンバーはみんないないという状態になってしまいまして、ここは課題なんですけども、立ち上げた方がいなくなっちゃうと、そのプロジェクトが動かなくなっちゃうということに直面しちゃいまして。いごく、というタイトルなのに、今いごけない、みたいなことになっています。

会場:(笑)

澁谷:igokuは、死というテーマがあって、変な使命感で真面目にやりすぎてしまうと難しくなるけれど、チームでポップに、うまく寄り添っているのがうらやましいと思いましたね。

髙木さんのブース。

暮らしてる、の次に、デザインがある。

澁谷:事前のデザイナー同士のミーティングで、阿部さんが、ぶっちゃけ東京の仕事かっこいい、うらやましくない? て思っていないか聞いてみたいとおっしゃっていたのも印象的だったんですけど……

阿部:自分も日本グラフィックデザイン協会(JAGDA)という組織に入っているから、やっぱりかっこいいデザイナーがいっぱいいるんですよ。年鑑とか買っちゃうし、買ってみて、わ〜やべえなって思うんだけど、もっと自分の足元見なきゃいけないのに、そういうところがどうしても気になっちゃって、それを仕事で意識しちゃって、なんかかっこいい、狙ったような感じのやっちゃって自爆する、みたいな、何かそういう繰り返し……

佐々木:このデザインはおばあちゃんには合わないだろうみたいな感じじゃないですか。JAGDAの年鑑見ていくと。最近は、この人には青森のデザインできないな、とか、割り切って受け取るようになりました。この人が青森に10年20年住んでてやるデザイン、なんて言えばいいかな……。住まないとできないデザインってあるじゃないですか。地元に住んで、地元の人と混じり合って生まれるデザイン。これはJAGDA年鑑にはのらないけれども、いいデザインだなって自分で思っていれば、勝ちかなって思うようになってきました。

佐々木さんのブース。

澁谷:『東北デ、』では、リレー形式でみなさんに出会って行ったんですけど、当初から大事にしてたのは、最初にデザインがあるんじゃなくて、ちゃんと山形で暮らしてる、青森の酒飲んでる、そしてデザインやってるって順番の人に会うこと。僕も東京のときはデザインの方が大きすぎて、終電で帰って、朝早くから出勤して、暮らしてなかった。だから、暮らしてるの次にデザインがある人がいいなと思っているので、暮らすところに自分の納得心があれば、デザインの納得心はあるだろうなとは思っているんだけど……

阿部:僕はその境地に行くまでもうちょっとかかりそう。

澁谷:ずっと遠野にいるかもわからないって言ってましたもんね。

阿部:永住したいという気持ちもあるけれども、わからないですよね。

澁谷:秋田に連れて帰っちゃう(笑)。僕ほしいですもん、こんなデザイナー。近くにいたらうれしいですもん。

佐々木:久慈の方に上がってきてください(笑)

澁谷:これも不毛な議論だよね。県境で分けてる時点でダメだなって。「アッテラ!」もみんなでつくらなきゃいけないですよね

佐々木:つくりましょう。

澁谷:プロダクトやりながらコミュニティつくりたいですよね。

佐々木:ほかの地域のこと知りたいですもん。

澁谷:今回行ける範囲でみんなでそれぞれの土地に行ったんですけど、とっても楽しかったですし、自分のところは来てもらえてうれしかったという感覚はありましたね。横塚さんはLIVE DESIGN Schoolを通じて本をつくりましたよね。

横塚さんのブース。

横塚:LIVE DESIGN Schoolは、ビジュアルをつくるものが狭い意味でのデザインだとしたら、今日の話のように、地域で暮らすことも含めたもっと広い意味のデザインを学ぶ場で、吉野さんも講師として参加されているんですけど、フィールドワークがあって、1人1カ所参加できたので、一番遠いところで行ったところがないところに行こうと思って私は島根に行って、その記録を小さな冊子にまとめました。なぜつくったかというと、行ってただすごいね、良かったねだけではなくて、形にしなきゃと思って、写真と文章とデザインを自分でやってつくりました。もうちょっとしたらオンラインで販売するので、ぜひ購入してください。

澁谷:島根という場所に1回身を置いた。

横塚:全然違いました。丸森は山に囲まれていますが、島根で行ったは、山もあるんですけど、海もすぐ目の前にあったり、温泉地の文化があったり、全然自分と違う場所に行くことによって、自分の場所を見つめ直せる気がしたのでそこに行ったという感じでした。

岩井:学生さんから、東京や大阪に出ていく人が多い中でどうやって地方でデザインするか不安がありますとコメントいただいているんですが、もしよければ直接質問をお願いできますか?

会場:山形の芸工大(東北芸術工科大学)に通っています。最初から東北という場所に残ってデザインすることもできると思うんですけど、東京に行って1回やってみないと厳しさとかわからないという声も結構聞くことが多いです。実際に東北という場所でデザインをやっているみなさんは、どう感じたり考えているかお聞きしたいです。

澁谷:僕も東京で6年間、広告代理店のデザイン部でロボットみたいにやってました。でも行ってよかったなと僕は思っています。秋田に戻ったのは父が死んだから。死ななかったら東京にいたと思います。今は戻ってよかったです。僕は東京に行った時点で秋田への想いはなかったけど、今質問いただいた方は東北に対する想いがあると思うので、それをちゃんとセッティングした状態で東京に行くのであれば問題ないと思うし、東京行って価値観変わったらそれはそれでいいんじゃないですか。東京といういち地方に惚れたら、それでいい気はするし、それはわからないことですけど。今の時点で東北への想いをもってるというのはすごいいいなと思いました。

澁谷さんのブース。

阿部:僕は東京に行ったことがない、東北から出たことがないので、やっぱりいまだにどこかにコンプレックスがあるんですよ。東京の空気を吸っていないから、なんか自分のつくるものってどこかやぼったいなみたいなコンプレックスを常に仕事をしながら感じているんですけれども、僕はフリーになる前、凸版印刷でアートディレクターの仕事をしていました。アートディレクターは自分でデザインするよりも、制作指示する、監督する立場だったので、より物事を俯瞰してみる癖をつけることができたというところでは、今のフリーの仕事の仕方に役立っている部分は多いかなと思っています。なのでいろいろ経験することはすごくいいと思います。どんどん経験した方がいいと思います。特に20代のうちは。

吉野:僕も東京にいてよかったなとは思います。行ってみてもいいと思います。ただ、先日LIVE DESIGN SCHOOLの開校式があって、オブザーバーでいらっしゃっていた原研哉さんが、「君たちは地域のデザイナーとしてやっているけれども、君たちから地域をとったら何が残るんだい?」みたいなことをおっしゃったんです。なんとなく僕らは、たぶんですけど、地域というものを肩書きにしてやっていたんじゃないか、それを除いたときに僕はどうなるんだろうみたいな、不安みたいなものを感じたんですけれども、原研哉さんが続いて、「地域のデザインというのはこれから普通なんだから、地域って言うのをやめないか。地域と言う代わりに、これからのデザインという名前を使ってやっていったらいいんじゃないか。世界を見渡せば、ロンドンとかパリとかニューヨークの人は、自分たちが世界の中心だと思っているけれども、私が中心にいるって言わない奥ゆかしさが日本人らしさでもあって、だから東京もローカルなんだ。まだ差はあるかもしれないけど、比べずに、やっていった方がいいんじゃない」という提案をされて、深く感動したということがありました。なので、そういう風になればいいなと思っています。

デザイナー7名の共通点

岩井:最後に、7人の共通点と、東北とほかの地域のデザインの違いについて、ひとことずつお願いしたいです。

髙木:僕がみなさんの話を聞かせてもらって思ったのは、みなさん自分の地域のことを好きなんだなと、愛しているんだろうなという感じがしました。僕も自分の地域好きですし、好きだからこそ、こうしたほうがいいんじゃないかという気持ちも出てくる。自分の両手の届く範囲くらいのことしかできないんですけど、その土地のことが好きだというのは共通していることだと思います。

阿部:みなさんすごくおせっかいなんだなというのはわかりましたし、語弊があるかもしれませんが、ちょっと貧乏性。ある意味貪欲ですよね。全然ゆるくない。地方のデザインってゆるさが魅力みたいなことをよく聞きますが、全然そんなことはなくて、誰よりも貪欲に、地域が、自分の半径何メートルくらいをよくしようみたいな想いが人一倍強いから、やっていけてるのかなと思いました。

阿部さんのブース。

佐々木:みんな人が好きかな。というところに落ち着くのかなと思いました。目の前の人を喜ばせたいという気持ちだけでみんな動いているんじゃないのかなと思うんですよ。どうですか? 結果、デザインができあがるというだけで。おせっかいであり、お人よしであり、人間好きですね。

澁谷:みんな好かれている印象もありますね。みなさんの土地に行くと、人が寄ってくる。その自然さがありました。

西山:人が寄ってくるのって、なんでなのかなと考えると、みんな感覚に素直なんじゃないかなと思いました。人を好きなこともそのまま出して仕事に活かせるし、おせっかいも、引っ込めずに気持ちのままやれるし、東京にいてロボットみたいに私も働いていましたけど、それって結構素直な気持ちを引っ込めて仕事をしている部分もあったりしたかなって。今は仕事を失敗したら私がここで暮らせなくなる可能性もすごくあるので、そういう意味で真摯に向き合わなきゃいけないということもあるとすると、みなさん素直にさらけ出して真摯に向き合っているというのをすごく感じて、ヒリヒリしつつ勇気をもらいます。

吉野:どんどん答えが難しくなってきましたね……(笑) 素直さ、人が好き。つまりそれが何につながっていくかというと、行動としては、これつくってくださいって言われて、お金のためだけなら、はいはい。ってすませばいいんですけど、本当にそれでいいの? それ、必要なの? 本当はこうした方がいいんじゃないの? という、おせっかいにつながってくると思うんですけど、そういう考えをちゃんと相手に言えるみたいな。それが本質を見抜いていくというところにつながっていくと思うんですけど、そういう風にできるみなさんじゃないかなと話を聞いていて思いました。

横塚:人のことを好きとか、その人のやっていることが好きというのの、レベルがとんでもなく高いのかなという気がしていて、相手よりも相手のことを好きになるし、相手のことをめちゃ考えるというのがあるのかなと思います。だからこそおせっかいになるし、みなさんうちの地域にはこういうものがあるんだよとか、こういう人がいるんだよみたいな、まるで自分の商売かのように人の商売を広めたりもすると思うんですけど、そういうのも、相手のことを相手よりも好きになっているからなのかなって思いました。

澁谷:2019年からみなさんと会ってきて、僕は、東北というのは雪というものがあったり、閉ざされたり、どうしようもないことがあって、あきらめる、そういう強さがあるとは思っています。あきらめるってすごくネガティブだけど、すごいポジティブにあきらめる力がある。秋田だと、「あ。雪降ってきたな、まぁしゃあねえか」とか、「熊出たね、また。しゃあねぇか」みたいな。アホなのか、なんなのか、ラテンな感じがあって。どんどんプラスされて経済優先できたけど、たぶんもう止めていいという部分もあって、デザインもいくらでも足し算できるけどあきらめる。ここまでっていう強さが、みんなにあるかなという気がしました。宮城のデザイナーもすごく悩んだんですが、横塚さんが終わりを肯定していたんですよね。

横塚:悲観するでもなく、そのままフラットにとらえたらそりゃあそうだよねという……。

澁谷:そのままっていうね。比較すれば東京は肥大させるんだけど、狭める力としては東北たぶん強いよね。雪だったり、震災だったり、いろんな状況があってのことだと思うけど。

阿部:遠野でも、いいんだいいんだってすぐ言うんですよ。やっぱいい言葉だなと思いますよね。

澁谷:すごい覚悟がある言葉だよね。

【番外編:会場からの質問】

——kitokitoMarcheのフライヤーのデザインは、若者を意識したものですか?

吉野:つくるものはかわいくなっちゃう。

澁谷:乙女があるよね。

吉野:中学校くらいまではかっこよく生きたいなと思っていたんですけど、無理だなと思って、かわいいものとか好きだったので。

澁谷:kitokitoMarcheの出展者は、吉野さんが声をかけるんですか?

吉野:3年目くらいまで、声かけてました。そのあとは、出たいって人がめっちゃ来ちゃうので、登録だけネットでしてもらって、そこからこちら側が選びますということにしていました。最初は公平性を担保していて、抽選みたいな雰囲気を醸し出していたんですけど、でも落ちる人いるじゃないですか。そういう人が本当に抽選してるのか?となっちゃって、してないので(笑)、僕が決めます。責任者僕です、ってちゃんと言うようにしてから気持ちが楽になりました。これで利益は求めていないので、ライフワークとして続けるのが楽な方をとっていった感じです。つまり正直になっていった方がいい。

——東北は、観光客・住民ともに高齢者が多いイメージですが、デザインする際にターゲットは意識していますか?

吉野:クライアントワークのときはします。あやふやなときが多いので、ある程度どのくらいですかと聞いて、文字の大きさを変えたりします。集客のときは、高年齢層は割と現実的な情報を求めやすいので、値段や商品情報をチラシに書く。反対に、低年齢層は、イメージと呼ばれるイラストや写真を多く使用するという手法はあると思います。

髙木:僕もターゲットは明確にしてからスタートするようにしていて、igokuもターゲットを最初に設定しました。高齢者の方も読みやすいということを前提にしながらも、これから親世代が介護期に入る、30〜50代の方が読みやすい企画や見た目を意識してつくり始めました。

吉野:地域だと若者という言葉が出てくるんですけど、僕の地域だと平均年齢が50なんです。だから50以下を若者と言った方がいいなと思って。若者って20代を指して言う人が多いような気がするんですけど、もはや50以下という認識。

澁谷:農業だと60歳以下でわげもの(若者)って言われるもんね。

吉野:若者の定義も、最初に相談した方がいいなと思います。

——デザインの理解が進んでいない地域にデザインの仕事を受注するためにどのような活動をしていますか?

吉野:受注するためにというのはやっていなくて、とにかく相談されたらやってました。呼ばれて行ったら、インターネットを繋がらないからどうしたらいい?って言われて線を繋ぎ直したりもしましたし、西山さんがデザイン相談会というのをやっているというのを聞いて、真似してやってみました。そしたらデザインってなんですかってお客さんが来て、そこで僕はこういうことができますというやりとりをしています。

西山:地域に開かれた事務所を目指して粒粒をつくったので、初期にデザイン相談デーというのを企画しました。問診表をつくったりして。そうしたら順番待ちになって、私が机に座って、「次の方どうぞ〜。どういうお悩みですか?」というのをやったのが2年前くらい。そのときにブルーベリーの摘み取り農園をやりたいとご相談いただいた方とブランディングのお仕事させていただいたこともあったし、元デザイナーのおじさんの、何かやりたいけどどうしたらいいんだろうという悩みを聞いたりもしました。

澁谷:デザイナーとクライアントのミスマッチングがなくなるのかなと思いました。

西山:仕事として本気で悩んでいるのか、それとも話したいのか、全然違いますからね。

澁谷:2時間くらい話聞いてお茶飲んで帰っちゃうとか、結構デザイナーって、聞く仕事ではありますよね。

——デザイナーを選ぶとき、どんなことに注意すれば良いですか?

横塚:結局は相性じゃないですか。こういうものをつくりたいというテイストで選ぶのもあると思いますけど、結局デザインって一緒につくるものだと思うので、デザイナーもそうだし、クライアントもそうだし、いろんな人と一緒につくるのが大事なところだと思うので、合う人を見つける。それは仕事の仕方が合うというのもそうだし、人間的に合うみたいなのも大事な気がしますけど、どうですか?

澁谷:今日ここの人たちにデザイン頼みたいと思います?

吉野:めんどくさそうです(笑)ぱっと終わらなそう。

澁谷:頼んでもないことをやるから、それをOKとできるかは、結構大きいかもしれない。

岩井:今回7名をまわらせていただいて、発注をする側がクリエイティブだなという印象を受けました。

——印刷会社は、デザイナーのみなさんとの共同が必要だと感じています。どんな印刷会社であれば地域の活性化ができるのでしょうか?

澁谷:僕らが印刷会社の方に近づく必要はあるかなと思っています。印刷会社が変わればいいということではなくて、きちんと現場のクオリティを守ってもらいながら、僕らとコミュニケーションをとっていくのが大事なのかなと。

——デザインをいちから学びたいと思ったとき、おすすめの始め方があれば教えてほしいです。

髙木:僕は仙台の専門学校を2年出たんですけれども、20年くらいデザインやっていなかったので、当時学んだ技術は使えないだろうなと思って、フリーになるタイミングで1回東京の宣伝会議のアートディレクター養成講座に通って、学び直しました。3年くらいめちゃくちゃ勉強した時期がありましたね。コロナ禍以降は通信で受けられるデザインのカリキュラムもたくさんありますよ。

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【東北デ、】とは

2019年に澁谷デザイン事務所と東北スタンダードマーケット(運営:株式会社金入)とがコラボレーションし始まった企画。東北で土臭く活動するデザイナーの企画展をリレー形式で行い、2023年に東北経済産業局の受託により、東北のデザインを考えるパネルディスカッションを開催しました。

これまでの活動をまとめた冊子は以下よりご覧いただけます。
>>東北経済産業局:「東北デ、~東北で、デザインするということ~」(冊子)

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佐藤 春菜(さとう はるな)

北海道出身。旅行ガイドブックを発行する都内出版社での勤務を経て2017年より活動の中心を東北に移す。フリーランスの編集者・ライターとして旅や暮らしにまつわる情報をさまざまなメディアに寄稿。東北スタンダードマーケットのウェブサイトでは「工房ストーリー」を執筆。総合旅行業務取扱管理者。手仕事と羊に夢中。