漆器

職人すら忘れていた日用の美

みなさんはどんな器でご飯を食べていますか。

現代においては磁器のお茶碗で食べるのが一般的ですが、江戸時代末期頃までは木椀でご飯を食べていたそうです。庶民が漆塗りの茶椀で食べていたかは定かではありませんが、少なくとも現代よりも漆器が身近なものであったのは間違いありません。かくいう私も陶磁器の茶碗やお皿を使うのがあたりまえで、日用的に漆器を使用し始めたのはここ10年くらいでしょうか。

私が普段づかいの食器として漆器を使い始めるようになったのは鳴子漆器の職人・後藤さんとの会話の中で「なんで漆器が売れなくなったか、ようやく気がついたんだ。俺自身がご飯には陶器の器、お皿には磁器を使ってるんだもの。そりゃぁみんなにも使われなくなるよな」という言葉がきっかけでした。この会話をきっかけに我が家の食器棚には少しずつ漆器が増えていきました。使ってみなければわからないし、伝えられもしないなと。

現代における漆器はハレノヒの器のイメージがあり、日常使いには少しハードルの高さを感じる人も少なくはありません。しかし、5、10年後と使い続けることで漆の表情が変わっていき、あなたの生活の必需品となっていくはずです。難しく考えず、まずは使ってみることをおすすめしてみます。

大河内英夫(おおこうちひでお) さんの画像

PROFILE

大河内英夫(おおこうちひでお)

宮城県仙台市生まれ。旅行情報誌、タウン誌などの編集者として地元企業に就職した後、フリーランスのカメラマン、ライター、編集者として様々な媒体に寄稿。仙台市の伝統工芸品PRサイト「手とてとテ」の制作チームに参加したのをきっかけに伝統工芸品の世界へ。
2015年から株式会社金入のディレクターとして工芸品のバイイングや行政、企業と工芸品との橋渡し役として様々なプロジェクトのプロデュースやディレクションを行う。
頑張って工芸品を生活に取り込むのではなく、「昔のヒトが現代に生きていたらこうだよね」をモットーに、Techと工芸品が当たり前に共存する未来を一人で実践する。