松川だるまと伝統こけし

そこにある祈りの風景「民芸品」

仙台という街で生まれ育ち40年余り、青春時代を過ごした個性的な街のカルチャーは失われ、どこかのクローンのような街の姿に、そこに暮らす人たちの暮らしと工芸品との関わりの行く末を重ねてしまいます。

そんな中、自分がすべきこととして実践しているのは、この先に残していきたい文化やモノたちを生活の中に取り入れること。

そのひとつが松川だるまや八幡馬、伝統こけしなど、風土や文化を象徴する民芸品たちと暮らすことです。その起源は様々ですが五穀豊穣、家内安全、商売繁盛など、日々の生活がより良くなるようにとの祈りを込めて伝えられてきたものがほとんどです。

お寺や神社にお参りするのはお正月くらい、そんな方にこそお気に入りの民芸品を家に飾って毎日挨拶してみることをおすすめします。朝起きてだるまさんに“おはよう”と挨拶し、家に帰ってきたら“ただいま”と声をかける。なにか悩みがあれば問いかけてみる。同じ民芸品でも日によって見える表情は様々で、これは自分自身の心象風景が民芸品に投影されるからだと思います。

このルーティンを通じて自分の変化に気づく。これこそが現代における「日常的な祈りのカタチ」といえるでしょう。

KANEIRI 大河内英夫
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PROFILE

大河内英夫(おおこうちひでお)

宮城県仙台市生まれ。旅行情報誌、タウン誌などの編集者として地元企業に就職した後、フリーランスのカメラマン、ライター、編集者として様々な媒体に寄稿。仙台市の伝統工芸品PRサイト「手とてとテ」の制作チームに参加したのをきっかけに伝統工芸品の世界へ。
2015年から株式会社金入のディレクターとして工芸品のバイイングや行政、企業と工芸品との橋渡し役として様々なプロジェクトのプロデュースやディレクションを行う。
頑張って工芸品を生活に取り込むのではなく、「昔のヒトが現代に生きていたらこうだよね」をモットーに、Techと工芸品が当たり前に共存する未来を一人で実践する。