変化し続けること、元気なまちをつくること。
美術館横にコワーキングカフェを構えた理由。

ーー八戸初のコワーキングカフェをつくられたのはどういった経緯だったのか、あらためてお聞かせください。

塚原隆市さん(以下、塚原):私が経営する南部電機の企業理念は「変化こそ常道」です。時代とともに変わっていく社会についていけなければ、会社がダメになる。そして、自分の会社が成り立つためにはまちが元気でいなければいけない、という考え方が根底にあります。

その理念に基づいて、まちづくりの一環としてはじめたのがコミュニティラジオ放送局BeFMです。まちづくりの手段として取り組むラジオ局ですから、もちろん、BeFMもまちとともに変化し続けなければいけません。

コワーキングカフェをつくることになったきっかけは、BeFMの移転問題です。移転先を探しているときに、当時建設中だった八戸市美術館にはカフェがないという話が耳に入りました。カフェがない美術館はさみしいなあと……。それと同時に、美術館の目の前にあるビルが空いていることを知り、我々がそのビルを購入すれば、BeFMの移転と美術館へ来館する方々へのカフェスペースを提供できると思ったんです。

塚原隆市さん:南部電機株式会社 代表取締役、株式会社ビーエフエム 代表取締役社長、一般財団法人VISITはちのへ 理事長

ーーはじまりは、BeFMの移転と美術館来館者向けのカフェ運営が目的だったのですね。

塚原:まず、ビルの2階はBeFMのオフィスに決定。さて、1階のカフェをどうするか? ということが課題でした。美術館に訪れるお客様が立ち寄って満足してもらえる空間にしたかったので、御社に家具や食器の相談をしました。ただ、前提として、カフェだけでの運営はとても厳しく、運営方法に何か工夫が必要だと。

そこで、以前から関心のあったコワーキングスペースについて学び直しました。各地のコワーキングスペースを視察しに行って、たくさんの事例を見れば見るほど、これからの社会に絶対に必要だと思ったんです。そうして「コワーキングカフェ」の計画が進んでいきました。

ーーこれからの社会に必要だと思われたのはどういった理由からですか? コワーキングスペースには、以前から関心があったのでしょうか。

塚原:東京のメーカーに勤務している私の息子が会社に行くのは週に一回なんです。あとはすべてリモートワークです。帰省先で仕事する場所を探すこともある。そんな息子の姿を見ていて、世の中の「働き方」「働く場所」の変化を感じていました。

テレワーク中心の会社員や、フリーランスで働く個人事業主が増えてきている。将来的には、きっとそういう人たちのための場所がたくさん必要になってきますよね。

エスタシオンのすぐ目の前は八戸市美術館のマエニワ。その奥には、八戸商工会議所や八戸市庁も臨める。

ーーエスタシオンは、どんな空間づくりにこだわりましたか。

塚原:エスタシオンは、カフェ・シェアキッチン・コワーキングスペース・シェアオフィスの複合型です。全体の空間において意識したのは、開放的であること。

私が理事を務めるVISITはちのへのオフィスは、もともとデスクを固定していなくて、誰でも使えるワークスペースが点在しているのですが、そのなかに、大きな窓に面したカウンターがあります。その窓から見える夕焼けがきれいなんですよ。日が暮れる時間になると、自然に人が集まってきます(笑)。リフレッシュすることで仕事がはかどるんだと思います。外を見るって大事なんですね。

エスタシオンは、1階にテラスを設けました。カフェとコワーキングスペースはとても明るくて、街の様子を身近に感じることができます。

3階の会議室を利用された方々からは、「大きな窓があって開放的なので、前向きに会議が進む」という感想もいただいています。

コワーキングスペース オープン席。テラス越しにまちの様子が見える。

ーー1階のカフェコワーキングスペースにはラジオブースもありますよね。

塚原:BeFMのオフィスはこのビルの2階ですが、ラジオブースだけは1階にしました。ラジオブースにも窓があって街の様子がすぐそばに見えます。まちづくりの一環としてはじめたラジオ放送局ですから、この場所は最適です。

あと、窓もない密閉されたところに比べて、外が見えるラジオブースは、ナビゲーターもゲストもテンションが上がってノってくるんですよね(笑)。

店外と店内にスピーカーを設け、生放送中のラジオの音が流れています。外を歩く人も、エスタシオンで仕事中の人も休憩中の人も、すぐそこで発信されているまちの情報に耳を傾けながら各々の時間を過ごすことができます。

左手の大きな窓の向こうがBeFMのラジオブース。市民との距離感は、まちづくりの一環としてはじめたコミュニティラジオ放送局ならでは。

新しい発見。八戸のビジネスマンには
中心街の大会議室が大人気。

ーープレオープンから約半年経って、反応はいかがですか?

塚原:カフェスペースは、当初の目的どおり、八戸市美術館の来館者にリピート利用されています。コワーキングスペースはじわじわと利用者が増えてきていて、需要があることを確信しました。

シェアキッチンは、デリバリーなど、コロナ禍をきっかけに発展しはじめた新しい飲食店スタイルの開発やスタートアップをサポートしたくて準備しました。利用方法の提案を日々模索しています。

シェアキッチンは基本的なキッチン設備が整っている。飲食店営業許可を取得しているので、複数の事業者が共同で利用することができる。

塚原:新しい発見は、いろいろなプランがあるなかで、3階の一番広い大会議室の利用率がとても高いことです。これは想像していませんでしたね。

ーー会議室は、どういった使われ方をされているんですか?

塚原:セミナーだったり、企業の会議だったり、さまざまです。

八戸市内に支店や営業所を構える企業は、自社のオフィスに大きな会議室がない場合が多く、社外の関係者を招いて会議をするときなどの場所探しに苦労していたようです。そういった方たちに利用されています。

会議中のドリンクは1階のカフェで注文できますし、会議が終わったあとそのまま中心街に飲みに行ける立地も、重宝されています(笑)。

人気の大会議室。最大20名まで収容可能。
最大収容6名の小会議室。会議室は大小どちらにも大きな窓から光が差し込む。

ーーたしかに。言われてみるといいことだらけですね(笑)。

塚原:私たちの強みは、ビジネス向けにとても安定したWi-Fi環境を提供できていることです。一度エスタシオンを利用したお客様は、その快適さに「もう戻れない」と言ってリピート利用してくれています。

ーーなるほど。これまで、フリーWi-Fiを提供しているカフェを利用していた方々が、エスタシオンを「働きやすい環境」として新たに選択しているということですね。

塚原:一般的なカフェのフリーWi-Fiは不安定なこともありますし。特に、オープンな場所ではオンライン会議への参加は難しいので、専用のスペースを設けているコワーキングスペースは重宝されていると思います。

1階はオープン席とブース席があり、3階は完全個室として使えるシェアオフィスと大小の会議室を用意しています。仕事の内容に合わせて集中できる環境を選んでいただけたらと考えています。

コワーキングスペースのブース席は半個室な空間。1階の席はいずれも会員登録なしで使いたいときに使いたいぶんだけ使えるドロップインのプランがある。
コワーキングスペースのブース席は、ゆったりとしたソファタイプ(定員2名)も選べる。
3階のシェアオフィスは月額料金でのレンタル。完全個室でしっかりと集中したい人向け。

時代の変化とともに変容する、まちづくりへの思いから誕生したコワーキングカフェ〈エスタシオン〉。後編では、まちに“開かれた場”があることの意義についてお話しが発展していきます

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PROFILE

塚原 隆市(つかはらたかし)

青森県八戸市在住。南部電機株式会社 代表取締役。株式会社ビーエフエム 代表取締役社長。一般財団法人VISITはちのへ 理事長。
2020年に創立70周年を迎えた南部電機株式会社では、自動車電装品の販売修理を中心に常に先行く技術と情報を地域へ提供。まちづくりの一環としてはじめたコミュニティラジオ放送局BeFM、八戸県域の魅力を国内外に発信するVISITはちのへなど、多岐に渡り地域振興への取り組みを行っている。
高校時代は弓道部に所属し、バイク通学でツーリングが趣味だった。

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PLACE

cowrking cafe estacion(エスタシオン)

青森県八戸市番町22 番町NDビル1F
TEL:0178-70-5147
FAX:0178-70-5195
営業時間:10:00~19:00/レンタルスペース、11:00~18:00/カフェ
定休日:日曜日

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