AEDの使い方を知ろう! 簡易版救命講習を体験。

ーー後編では、実際に行われている救命講習の簡易版を体験させていただきます! 藤丸さん、よろしくお願いします。

藤丸克司(以下、藤丸):よろしくお願いします。実際の救命講習では、まず初めに、前編でお話ししたような、年間の心肺機能停止の傷病者数や救命措置をおこなうことで変化する生存率などについてお話しします。

藤丸:前編の復習ですが、キーワードは「5分以内」です。心停止してから1分ごとに7~10%ずつ、生存率が低下していきます。生存率がまだ50%残っている5分以内に心肺蘇生をおこなうことが非常に重要です。救急車の平均到着時間は全国平均で約10.3分。救急隊や医師を待っていては、救える命も救えません。その場に居合わせた人が、救命措置をおこなう必要があります。

ーーでは、街で倒れている人を見かけたら、まず何を確認すべきですか?

藤丸:まずはすぐに近づかないでください。近づく前に、周囲の安全を確認しましょう。助けようとした自分が、別の事故に巻き込まれてしまってはいけませんから、倒壊しそうな建物がないか? 車通りは少ないか? などを考えながら、上下左右、前後を確認して自分の身の安全を確保します。

ーー地震発生時などは余震などにも気をつけたいですね。

藤丸:そうですね。自分の身の安全が確保できたら、倒れている人に近づいていきます。近づいて始めにやることは、呼びかけです。倒れている人の両肩を強く叩いて、大きな声で呼びかけます。「(ドンドンドン、と両肩を叩いて)大丈夫ですか!? どうしました!? わかりますか!?」 という具合ですね。

ーーけっこう強めに叩くんですね。

藤丸:寝ているだけなら飛び起きてくれるはずですから。それでも反応がなく、ぐったりとしているようであれば、直ちに119番通報をして救急車を呼ぶ必要があります……が! ひとりでは何もできませんから、まずは周りの人に応援を求めます。「ここに人が倒れています! 誰か手を貸してください!」という感じですね。そこで人が集まってきてくれたら、119番通報とAEDを手配します。

ーー来てくれた人にお願いするということですか?

藤丸:そうです。その際にポイントがあって、必ず誰かを指名して、その人の目を見て「あなた、119番通報をお願いします!」「あなた、AEDを持ってきてください!」とはっきり伝えることが大切です。「誰か持ってきてください!」だと、誰も持ってきてくれない可能性がありますから。

ーー119番通報とAEDの手配が済んだら何をしますか?

藤丸:次は呼吸の確認をします。確認方法は、倒れている人のお腹の上がり下がりがあるかどうかを10秒以内に目視で確認します。もし厚手の服を着ているなどでわかりにくい場合は、お腹に手を当てて、お腹の動きを感じるように確認します。

ーー6年ほど前に自動車教習所で心肺蘇生講習を受けた際は、「頬を唇の上に寄せて、胸の動きを確認する」と習ったような気がしますが、それは必要ないのでしょうか?

藤丸:少し前までは小田桐さんがおっしゃる通りでしたが、コロナ禍を経て、感染症対策として、顔を近づけなくても確認できる方法として、先ほどのやり方で講習をするようになりました。
呼吸をしていない場合、もしくはあえぐような異常な呼吸(死戦期呼吸)をしていた場合は、「呼吸なし」と判断します。わからない場合も「呼吸なし」と判断して結構です。

藤丸:目の前で倒れている人が、なぜ倒れているのか? 私たちには判断がつきません。私たちに与えられたものさしはたった2つ。反応がないこと、呼吸がないこと。この2つに当てはまったら、直ちに胸骨圧迫とAEDを使ってみてください。

ーー胸骨圧迫はどのように実施すればよいですか?

藤丸:片方の腕を突き出し、手首をそらします。突っ張り棒のように肘をピンと伸ばして突っ張って、もう片方の手を重ねます。突っ張っている手のひらの付け根のあたりを、心臓の上に乗せ、5cm以上押します。だいたい単三電池1個分の深さです。

ーー結構な深さですね!

藤丸:その強さで、1分間に100〜120回押していきます。「どんぐりころころ、どんぶりこ〜」のリズムですね。先ほど、呼吸があるかないか確認できない人は胸骨圧迫を開始していいと話しましたが、結構な力、かつ、結構な速さで行わなければならないので、寝ているだけの人ならすぐに目を覚ますはずなのです。

藤丸:ところで、小田桐さんに質問ですが、心臓はどの辺にあると思いますか?

ーー左胸ではありませんか? ドラマや漫画で、胸ポケットに手帳が入っていて銃弾から守られた! みたいなシチュエーションをよく見ます(笑)。

藤丸:それはドラマのお話ですね(笑)。実は、心臓は、胸の真ん中あたりにあります。詳しくいうと、胸骨の分かれめの少し上あたりに、少し左向きでくっついています。ですので、だいたい胸骨の終わりあたりの真ん中をめがけて、胸骨圧迫を行います。

ーーお年寄りだと、骨が折れてしまいそうなのですが、折れてしまった場合は止めた方が良いのでしょうか?

藤丸:折れても止めずにやり続けてください。骨は折れてもやがて元に戻りますが、心臓は止まったら二度と動きません。骨が折れる場合は、胸骨圧迫の場所が少しズレてしまって、肋骨が折れていることがほとんどだといいます。その場合、折れた骨が心臓に刺さるようなことはまずないそうなので、ご安心ください。

藤丸:大切なのは、止まっている血液の流れを再開させること。とにかく脳へ血液を送らなければいけません。前編で、心停止は心臓のポンプ機能が失われた状態、と話しましたが、胸骨圧迫でポンプ機能を手動でおこない、その人の生存を継続させるというわけなんです。小田桐さん、ちょっとやってみましょうか。

ーーはい! 頑張ります!

脳内で「どんぐりころころ」を流しながら、胸骨圧迫をする小田桐。

藤丸:いいですね! 強さもリズムもいい感じです。

ーーありがとうございます! でもこれけっこうハードですね! 疲れてきたらどうしたらいいですか?

藤丸:胸骨圧迫はなかなかハードですから、ひとりではできません。必ず誰かと一緒に行い、交代する際は「1・2・3」でタイミングよく交代してください。

ーーわかりました! 健雄社長! 次、お願いします!

金入健雄(以下、金入):僕ですか(笑)!? 

困惑しながらも待機してくださった健雄社長。取材に同席していた。突然巻き込んでしまって申し訳ない。

ーー行きますよ! 1・2・3!

藤丸:いい交代です!

ーー健雄社長、ご協力ありがとうございます!

金入:一生懸命やったらスマートウォッチが変な挙動をしだした(笑)。

ーー(笑)。ちょっとやっただけで体が熱くなりましたね。

藤丸:AEDが近くにない場合は、このように交代交代で、救急隊員が来るまで胸骨圧迫を続けてください。さぁ、そうこうしているうちにAEDが到着しましたよ!

藤丸:AEDが来たら、直ちに傷病者の服を脱がせます。脱がしにくい服の場合はハサミなどで切っちゃって素肌を露出します。素肌が現れたら、汗などの水分をよく拭き取り、アクセサリーなどの金属類を取り除きます。金属類は、電気ショックの影響で火傷の跡が残ってしまう場合があります。

ーー例え緊急時であったとしても、衣類を脱がされることに抵抗がある人もいるのではないでしょうか?

藤丸:昨今は動画を撮ってSNSにあげる人もいますから、特に要救助者が女性の場合は、配慮は必要だと思います。脱がせたら、すぐに上から何か羽織らせるとか、周りの人に背中合わせで囲ってもらって壁をつくるとか、いろんな方法があると思います。ただし、パッドを貼るのは素肌でなければなりませんので、そこだけ気をつけてください。AEDが到着したら、とにかくまずは電源を入れます。あとは音声案内の指示に従うだけでOKです。

AED:直ちに119番に電話してください。胸を裸にしてください。緑のつまみをひっぱり、パッドの袋を引き出してください。袋を開けて、中からパッドを取り出してください……。

ーーめちゃくちゃよく話してくれますね! これなら、緊急時でも落ち着いて対処できそうです。

藤丸:パッドを貼る位置もイラストで提示してくれていますから、その通りに貼れば大丈夫です。右鎖骨の下と、左脇の下あたりですかね。心臓を挟むようにパッドを貼るのがポイントです。パッドを貼ると、心電図の解析が始まります。心電図の解析中は、誰も触らないように注意してください。触ってしまうと、他の人の脈をとってしまうなど、正しい心電図が測れなくなります。心電図の解析後、電気ショックが必要かどうか判断してくれます。

ーー電気ショックが不要と判断される場合もあるんでしょうか?

藤丸:不要な場合は「電気ショックは不要です」と言ってくれますのでご安心を。

AED:電気ショックが必要です。体から離れてください。

藤丸:AEDの電気ショックは約2000V。電気ショックをおこなう際は、感電する恐れがありますので、誰も体に触れていないことを必ず確認してください。「電気ショックをおこないます! 離れてください!」と大声で注意喚起します。

AED:オレンジ色のショックボタンを押してください。

藤丸:ここでオレンジ色のショックボタンを押すと、ドンッと電気ショックがおこなわれます。

AED:電気ショックをおこないました。直ちに胸骨圧迫を始めてください。

藤丸:ここで先ほどやった胸骨圧迫を再開します。パッドはつけたままで大丈夫です。2分おきに心電図を測ってくれるので、その際にまた手を離して、電気ショックが必要かどうか判断してもらいます。複数回電気ショックをしないと蘇生しないケースもあると言われています。

AED:ピッピッピッピッピッピッ……。

ーーよもやこの電子音は、胸骨圧迫のリズムですか!?

藤丸:そうですね。AEDはこのようにメトロノーム的にリズムを流してくれます。

ーー AEDのメーカーによって違うんですね。

藤丸:細部の違いはありますが、基本的な流れは同じです。これを繰り返しながら、救急隊員が来るまで待つ、という流れになります。心電図の記録が残りますので、電極パッドはつけたまま、救急隊員に引き継いでください。

あなたの推しAEDはどれ? 企業特性に合わせた一台を。

ーーAEDはメーカーによって、それぞれ特徴が異なるということでしたが、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。

藤丸:例えば、ディスプレイがついているかどうか。AEDは基本的に音声誘導してくれますが、耳の不自由な方や、パチンコ店や工場での事故など、比較的騒がしい環境ですと、AEDの音声が聞きづらい場合があります。そうした場合は、ディスプレイがあると便利です。

藤丸:あとは未就学児切り替えボタンがついているかどうか、もポイントですね。小学生に上がる前の未就学児には、電気ショックのエネルギー量を成人の約1/3程度に減衰できますので、保育園や教育施設などでは、未就学児モードのあるAEDの導入をおすすめします。

ーーなるほど。配置する場所の特性に合わせて、メーカーを選ぶとよいということなんですね。ちなみにおふたりの推しAEDはありますか?

荒屋敷篤士(以下、荒屋敷):僕は〈オムロン〉が推しです! 性能としては一番コンパクトで、シンプルなつくりになっています。ですが、僕が〈オムロン〉を推したいのは性能の部分だけではなく、保守サービスのところです。

〈オムロン〉の「レスキューハート HDF-3500」

ーー保守サービスですか。

荒屋敷:はい。AEDにも他のオフィス機器と同じように、保証期間や耐用期間があります。また、メーカーによっても消耗品の使用期限が異なります。電極パッドは2年、バッテリーは4年など、バラバラな場合もあります。そうなると管理が面倒になりますよね。

ーー何が何年か覚えておくのも大変ですね。

荒屋敷:〈オムロン〉製AEDはバッテリーと電極パッドが一体化していて、使用期限は約4年。パッドパックをひとつ交換するだけでOKです。さらに「安心パック」では、使用期限が近づくと、自動で新しいパッドパックが送られてきますので、置いておくだけで大丈夫、というのが推せますね。

藤丸:使わないに越したことはありませんが、実際には使われないケースがほとんどだと思います。ですが、万が一の際に、電源がつかない! ということになれば、大変ですよね。ですから、導入された方には、日頃の日常点検が求められるのです。

ーー日頃の点検といっても何をしたら良いのでしょうか?

藤丸:基本的にはどのAEDにも、セルフチェック機能がついていて、定期的に不具合がないかチェックしてくれます。もし何か不具合があれば、AED本体に表示されますので、何か表示されていないか、日常的に目視で確認してもらえたらOKです。

〈日本光電〉のAED「AED-3150 カルジオライフ」。

荒屋敷:点検の話ですと、藤丸さんが大好きな〈日本光電〉のAEDはリモート監視機能がついていますよね。

藤丸:〈日本光電〉のAEDには、本体にリモート監視端末が付属していて、AEDが今どんな状態なのかを自動で〈日本光電〉のサーバーに送ってくれます。何か異常があれば、メーカーからお客さまにメールで通知してくれるのが素晴らしいところだと思います。

〈旭化成ゾールメディカル〉の「ZOLL AED 3」のパッド部分。

藤丸:他には、〈旭化成ゾールメディカル〉製のAEDは、胸骨圧迫ヘルプ機能がついているのもいいですよね。

ーーこのAEDなら、胸骨圧迫の場所がわからなくてもすぐに対処できますね。

藤丸:さらに胸骨圧迫中のフィードバックもしてくれるんですよ。「もっと強く押してください!」とかね。

ーーメーカーによって、こんなに違いがあるんですね。自社の事業特性に合わせて、最も合うものを選びたいですね。

救命講習で、一歩踏み出す勇気を。
ひとりでも多くの命を救うために。

ーー簡易版ではありましたが、救命講習を受けるだけで、AEDの使い方や心肺蘇生の理解度がぐんと高まって、自分でもできそうな気がしてきました!

藤丸:ありがとうございます! 救命講習の最後にいつもお伝えしているのですが、もし本当に街で人が倒れているのを見かけて、勇気を振り絞って救命措置を行ったとしても、残念ながら助からないケースもあります。その際に、ご遺族の方から「医者でも救急隊でもないあなたが余計なことしたから・・・・」と非難されるのではないかと、心配される方がいらっしゃいます。法律的な話でいうと、善意に基づいて救急蘇生を実施した場合には、民事上、刑事上の責任を問われることはないので、ご安心ください。

何度も繰り返しお伝えしていますが、目の前で倒れている人を救えるのは、その場に居合わせたあなただけ。救急隊や医師を待っていては遅いのです。勇気を持って、一歩踏み出してみていただきたいと思っていますし、ひとりでも多くの命を救うために、今後もAEDの普及や救命講習などを実施していきたいと思っています。

荒屋敷:僕は、いつかの将来一家に一台AEDがある世界をつくりたいと考えています。どこでどのように人が倒れても、1分以内に行って戻ってきて救命措置の取れる世界。そのために、これからもAEDの営業をがんばっていきます!

お二人ともありがとうございました! 地域の命は、地域の人みんなで守っていけたらいいですよね。AEDの導入ももちろんですが、救命講習の受講も、ぜひ多くのみなさんに検討してもらいたいと思います!

<今回の取材でご紹介したAEDの詳細・取り扱いについて>

販売名:自動体外式除細動器 AED-3100 カルジオライフ
医療機器承認番号:22700BZX00187000
型番:AED-3100CSET
高度管理医療機器/特定保守管理医療機器

販売名:自動体外式除細動器 AED-3100シリーズ カルジオライフ AED-3150
医療機器承認番号:22700BZX00187000
型番:AED-3150CSET
高度管理医療機器/特定保守管理医療機器

販売名:レスキューハート HDF-3500
医療機器承認番号:22700BZI00047000
型番:HDF-3500SETC1
高度管理医療機器/特定保守管理医療機器

販売名:ZOLL AED 3 自動体外式除細動器
医療機器承認番号:30100BZI00003000
型番:ZOLL AED 3
高度管理医療機器/特定保守管理医療機器
AEDは救命処置のための医療機器です。AEDを設置したら、いつでも使用できるように、AEDのインジケータや消耗品の有効期限などを日頃から点検することが重要です。製造販売業者または販売業者が、設置者の保守管理の手間を軽減する独自のサービスをご用意しております。
お客様のご都合に合わせて、これらを利用し、いつでもAEDが使える状態にしておいてください。

■AEDを設置した際にはAED管理者が、製造販売業者の推奨する保守点検を実施するとともに、AEDの常時使用可能な状態の確認をしてください。電極パッド、バッテリの使用期限の確認、および期間内の交換の実施を確実に行ってください。(電極パッドは使い捨てのため、再使用は禁止されております。)
■製品に同梱された表示ラベルは、電極パッド、バッテリ等の消耗品の使用期限がわかるように本体またはキャリングケース、キャビネット等のわかりやすい位置に設置してください。表示ラベル等が添付されていない場合は、販売業者へ連絡してください。
■以下の場合は管理者が製造販売業者へ連絡してください。
◇不測の事態が発生したとき ◇譲渡するとき(医療販売業許可を有する業者に限る) ◇廃棄するとき 
■未就学児に対する小学生~大人用(標準)モードでのAEDの使用は、未就学児用パッドあるいは未就学児モードを備えたAEDが近くにないなど、やむを得ない場合に限り使用してください。また、未就学児に使用する場合には、2枚のパッドが触れ合わないよう特に注意してください。
■添付文書を必ずお読みください。
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海猫ふれんず

八戸市出身の女性3人による情報発信ユニット。八戸圏域へのUIJターンを目的とし、オンラインイベントの開催や八戸市の市民活動奨励金制度を活用したワークショップなどを開催。