みなさんこんにちは! 〈海猫ふれんず〉の小田桐です。
〈金入〉本社に来ています。

今回取り上げるのはこちら!

じゃーん、AEDです! オフィス機器や文房具を販売している〈金入〉ですが、実はAEDも販売しているのです! 〈金入〉がAEDを仕入れているのは、カメラやプリンタで有名な〈キヤノンマーケティングジャパン株式会社〉なのだそう。今回は両社のAED担当者から、じっくりお話を聞いてきました!

命を救うAED。キーワードは「5分以内」。

ーーではここからは、〈金入〉営業部の荒屋敷篤士(あらやしき あつし)さんと、〈キヤノンマーケティングジャパン株式会社〉の藤丸克司(ふじまる かつし)さんにAEDについて伺っていきたいと思います。

荒屋敷篤士(以下、荒屋敷):よろしくお願いします。

藤丸克司(以下、藤丸):よろしくお願いします。本題に入る前に、ちょっとだけいいですか。私、今は宮城県仙台市に住んでいるのですが、実は青森県八戸市生まれなんです!

〈キヤノンマーケティングジャパン株式会社〉の藤丸克司さん。

ーーえっ! そうなんですか!

藤丸:そうなんです! ですから、八戸には第二のふるさとのような気持ちでいつも来ています。

ーーなんと! 縁のある方に、八戸のAED界は守られているのですね。嬉しいです! さっそくですが、AEDというのは「心停止したときに使うもの」という認識で合っていますか?

藤丸:はい、AEDというのは「Automated External Defibrillator」の略で、日本語では「自動体外式除細動器」といいます。心停止状態になった要救助者に対して使う医療機器です。

ーーAEDは「医療機器」なんですね。

藤丸:正確にいうと「高度管理医療機器」のクラスⅢにあたります。高度管理医療機器のクラスⅢは、不具合が生じた場合、人体へのリスクが比較的高いと考えられるものです。身近なものですとコンタクトレンズも高度管理医療機器のクラスⅢですね。

今回〈キヤノン〉からお持ちいただいたAEDたち。

ーーコンタクトレンズも! 確かに体の内側に入り込んでますもんね。AEDは、強い電気ショックを体に与える装置だというイメージがあります。

藤丸:そうですね。簡単にいうと、心臓に強い電気ショックを与えて、心臓を正常な状態に戻すのがAEDの役割です。そもそも「心停止」がどのような状態か、小田桐さんは知っていますか?

ーーその名の通り、心臓が止まっている状態のことでしょうか?

藤丸:残念ながら、不正解です(笑)。心停止とは、心臓から脳や身体中に血液と酸素が送り出されなくなった状態のことをいいます。

ーー「心停止」は心臓が止まっているわけではないと!?

藤丸:はい。そもそも心臓は、電気信号によって、毎日規則正しく一定のリズムで拍動し、ポンプの役割を果たしながら、酸素を含んだ血液を身体中に送り出しています。しかし、なんらかの原因で電気信号が狂ってしまうと心臓が突然けいれんし始めることがあります。これを「心室細動」といい、心臓はただ震えているだけでポンプ機能を失っています。よって、身体中へ血液と酸素を送り出すことができなくなってしまうのです。

この「細動」を「除く」ため、つまり「除細動」のための装置がAEDです。電気ショックを与えることで、電気信号を正常な状態に戻そうというわけなんですね。特に脳細胞は一度壊れてしまうと二度ともとには戻りません。心停止したら、一刻も早くAEDを使用して救命措置をとる必要があります!

ーー一刻も早く、ですか。しかし、実際に倒れている人を目の前で見かけたら、すごく怖いですし、救急隊員が来るのを待った方がよくないですか?

藤丸:気持ちはわかりますが、それでは遅いのです。 心停止してから1分経過するごとに、生存率が約7~10%下がるというデータが出ています。脳機能が消失してしまうのは、心停止してから3〜5分。脳機能を守るためということもあり、生存率が50%程度残っている5分以内に、心肺蘇生を開始することが重要です。しかしながら、119番通報をしてから救急隊が到着するまでの時間は全国平均で10.3分かかります。

ーー間に合わないってコト……!?

藤丸:その可能性が高いということです。救急隊や医師を待っていては命を救うことはできません。だからこそ、その場に居合わせた人が、救命措置をおこなう必要があるのです。実際に1カ月後の生存率を比べると、救急隊員の到着まで何もしなかった場合は6.6%、胸骨圧迫に加えAEDを使用した場合は50.3%と、非常に多くの命を救えることがわかります。

ーーAEDは私たち一般人でも使えるものなのでしょうか?

藤丸:以前は医療関係者や救急隊員だけが使用できましたが、2004年からは一般市民も使用可能になりました。2004年当時は、駅や学校、行政機関などの公共施設が中心でしたが、年々普及し、現在では行政・民間問わず、人の集まる場所などに、約67万台のAEDが設置されています。

ーー気がついてないだけで、至るところに設置されているのですね。八戸市ではどれくらい設置されているのでしょうか?

荒屋敷:八戸市内には458箇所、472台設置されています(2024年2月現在)。こちらは八戸市のホームページに掲載されている数字、市に申告している情報なので、もしかしたら本当はもっと設置されているかもしれません。

八戸市のホームページより、八戸市AEDマップで検索した結果。

ーーそんなに多く設置されていれば、たくさんの人が、有事の際に活用できそうですね!

荒屋敷:今でも多く設置されていますが、理想は5分以内に行って戻ってきて救命措置を始められる場所なので、各フロアに1個ずつなどあるのがいいですね。

ーーAED設置率は、今後ますます向上していきそうですね。

藤丸:しかしながら、2023年のデータによると、実際にAEDが使用されたのはわずか4.3%となっています。今後は、AEDの使用法を正しく理解し、救命時にいかに使用率を向上させるかが課題になっています。

売るだけじゃない! 社会貢献のためのAED事業。

ーーところで、キヤノンというと、カメラやプリンターのイメージが強いので、AEDを取り扱っているというのは意外でした。

藤丸:おっしゃる通り、キヤノンはカメラから始まった会社ですが、レンズに代表される光学技術を応用して眼底カメラなど、実は、古くから医療機器の分野に携わっているのです。キヤノン創業者である御手洗毅(みたらい たけし)がもともと産婦人科医だったこともあり、彼のDNAを継いでいるのかもしれません。

ーー〈キヤノン〉でAEDを製造しているということでしょうか?

藤丸:いえ。私共では〈日本光電工業〉〈オムロンヘルスケア〉〈旭化成ゾールメディカル〉といったメーカーから仕入れたAEDをパートナーさまに販売しております。

ーーなぜAEDの販売を?

藤丸:日頃から複合機やプリンタなどでお世話になっているお客さまに、弊社として何か貢献できることはないかと考えた際に、AEDを提案することになったのです。AEDは人の命を守るための装置ですから、AEDを提案することで、お客さまの従業員の命を守るためと、近隣住民への社会貢献業として、2009年からAEDの事業が開始されました。

ーー事業開始当時から、顧客に受け入れられたのでしょうか?

藤丸:キヤノンにとってはまったく種類の異なる商品になりますから、事業開始当時の認知度は非常に低かったです。また、AEDを販売するためには特別な許可が必要になるので、代理店様には高度管理医療機器を販売する許認可をとっていただくところから始まりました。取引しているパートナーさまに扱っていただき、そのパートナーさまのお客さんへ売っていただいて……という地道な努力を繰り返して、普及させていきました。〈金入〉さんは比較的早い導入でしたね。

荒屋敷:2014年6月に〈金入〉本社に1台目を設置し、その後、最初の販売につなげたと聞いております。

藤丸:そうですよね。私、当時〈金入〉さんで救命講習をした記憶があります(笑)。

〈金入〉の荒屋敷篤士さん(左)と、藤丸さん。

ーーキヤノンでは救命講習もおこなっているのですか!?

藤丸:もちろんです! AEDは社会貢献事業ですので「売って終わり」ではなく、お客さま自身に使えるようになってもらう目的もあります。2010年からは、社内インストラクターの育成を開始し、現在、グループで約400名のインストラクターを配備しています。全国各地で心肺蘇生講習を行っており、2023年が終わった時点で累積1万7,466件、23万2,324人に受講いただきました。

ーー八戸市の人口より多い……!

藤丸:目標は30万人ですので、残り約6万7,000人のみなさんに心肺蘇生講習を受講いただく予定です。SDGsの観点に照らし合わせると、「3. すべての人に健康と福祉を」「11.住み続けられる街づくりを」に該当します。昨年のデータによると、心原性心肺機能停止の傷病者数は、年間約9万人だったそうです。より多くの人に心肺蘇生講習を受講いただき、AEDを使用できる人を増やして、1人でも突然死する人を減らしたいですし、現在の活動がその一助になればと思っています。

導入により企業価値を高めるAED。

ーーAEDを地域に設置することで、どんな価値が生まれると思いますか?

藤丸:一番は、ひとりでも多くの命を救うことができる社会をつくるというのが、大きな価値だと思います。しかし、AEDというのは、設置を義務付けられているものではありません。だからこそ、AEDを取り扱うことで「社会貢献に目を向けている企業」として、企業価値が高まるのではないかと考えます。

藤丸:我々のパートナーである〈金入〉さんの企業価値が向上しますし、最終的には、AEDを導入した企業の近隣住民の命を守る社会貢献につながりますから、〈金入〉さんが販売したお客さまの企業価値も高めることができます。

こういったところも、AEDを設置するひとつの価値になるのではないでしょうか。〈金入〉さんには、まさにこのいいスパイラルを体現したようなAEDの導入事例がありましたよね。

ーーなんと! どういった事例なのでしょうか?

荒屋敷:新規のお客さまだったのですが、移動式の飲食店事業を実施されており、ちょうどさまざまな経営課題にぶつかられていたんです。具体的には、新規のお客さまに来ていただきたい、リピーターを増やしたい、競合他社と差別化を図りたいといったところでした。当初は大判プリンタなどの、早くてきれいにチラシを刷れる機械などを提案していたのですが、なかなか響かなくて。そこで、新規顧客の獲得と他社との差別化のために、AEDを車載するのはどうか、と提案しました。

ーーAEDの車載ですか。

荒屋敷:はい。地方では、お子さんたちと離れて暮らす一人暮らしの年配者が多く、遠方にいるお子さんたちは心配なのではないかと考えました。そこで「地域の命を守る」というコンセプトで、AEDの車載を提案しました。万が一のことが起きたときは、救命措置をとることもできますし、緊急連絡先なども登録していただければ、実際に親族の方へ連絡をすることもできます。そもそも移動式の飲食店なので、配達や移動が地域パトロールにもつながります。そうすることで、お客さまが理想とする、独自の企業カラーが出せるのではないかと考えました。

藤丸:AED車載の取り組み自体は珍しいことではありませんが、お客さまの経営課題に深く切り込んでいき、本当に困っていることや真の経営課題を引き出したことが、素晴らしいポイントですよね。さらに、商品としてはAEDを購入いただいたわけですが、ただ車載してもらったわけではなく、荒屋敷さんのお客さまの企業価値を高めることにつながったことも非常に素晴らしいと感じました。結果として、荒屋敷さんがお客さまに感謝され、また次の商談につながっていく……、非常に良いスパイラルですよね。

荒屋敷:ありがとうございます! 照れますね(笑)。

ーー荒屋敷さんはどのようにして、お客さまから真のニーズを引き出したのですか?

荒屋敷:そのお客様は起業したてで、認知してもらうためのホームページをつくったというところから話が広がりました。弊社ではホームページ作成も行っていますので、何か力になれたらと思い、お客さまにホームページを見せてもらうことにしました。

ちょうど弊社公式ホームページがリニューアルしたばかりで、「こんなホームページもありますよ」と、なかば自慢げに、弊社のホームページもお見せしました。

ーーホームページの見せ合いっこをしたわけですね(笑)。

荒屋敷:そうなりますね(笑)。そこから「ここはどんな思いでつくったの?」とか「この文章いいね」などと、お互いのホームページを見ながら対話が弾みました。そのなかで、発言量の多いところを深掘り、反応の薄いところはスルーしたりと、お客さまと深い部分まで知ることができるコミュニケーションができたと思います。

ーー素晴らしい営業力! AEDは人の命を救うだけでなく、経営課題も解決してくれるんですね! 

荒屋敷:営業をしていると「AEDがあった方がいいのはわかるけど……」という意見をよくいただきます。もちろん安い買い物ではないですし、正直、普段使われるものでもありません。ではなぜ導入するのかというと、従業員を守るためであったり、地域住民を守るためであったり。そうした大切な誰かの命を守るということが、結果的に他社競合との差別化につながって売上が上がるなど、いいことはたくさんあると思います。

藤丸:そうですね。企業には労働契約法や労働安全衛生法で「安全配慮義務」が定められています。「安全配慮義務」とは、企業が従業員の健康と安全に配慮する義務のことです。AEDを導入する企業がどんどん増えて、安心して働ける職場になっていってほしいですね。

後編ではAEDを使った救命講習を、プチ体験した様子をお届けします!

<今回の取材でご紹介したAEDの詳細・取り扱いについて>

販売名:自動体外式除細動器 AED-3100 カルジオライフ
医療機器承認番号:22700BZX00187000
型番:AED-3100CSET
高度管理医療機器/特定保守管理医療機器

販売名:自動体外式除細動器 AED-3100シリーズ カルジオライフ AED-3150
医療機器承認番号:22700BZX00187000
型番:AED-3150CSET
高度管理医療機器/特定保守管理医療機器

販売名:レスキューハート HDF-3500
医療機器承認番号:22700BZI00047000
型番:HDF-3500SETC1
高度管理医療機器/特定保守管理医療機器

販売名:ZOLL AED 3 自動体外式除細動器
医療機器承認番号:30100BZI00003000
型番:ZOLL AED 3
高度管理医療機器/特定保守管理医療機器
AEDは救命処置のための医療機器です。AEDを設置したら、いつでも使用できるように、AEDのインジケータや消耗品の有効期限などを日頃から点検することが重要です。製造販売業者または販売業者が、設置者の保守管理の手間を軽減する独自のサービスをご用意しております。
お客様のご都合に合わせて、これらを利用し、いつでもAEDが使える状態にしておいてください。

■AEDを設置した際にはAED管理者が、製造販売業者の推奨する保守点検を実施するとともに、AEDの常時使用可能な状態の確認をしてください。電極パッド、バッテリの使用期限の確認、および期間内の交換の実施を確実に行ってください。(電極パッドは使い捨てのため、再使用は禁止されております。)
■製品に同梱された表示ラベルは、電極パッド、バッテリ等の消耗品の使用期限がわかるように本体またはキャリングケース、キャビネット等のわかりやすい位置に設置してください。表示ラベル等が添付されていない場合は、販売業者へ連絡してください。
■以下の場合は管理者が製造販売業者へ連絡してください。
◇不測の事態が発生したとき ◇譲渡するとき(医療販売業許可を有する業者に限る) ◇廃棄するとき 
■未就学児に対する小学生~大人用(標準)モードでのAEDの使用は、未就学児用パッドあるいは未就学児モードを備えたAEDが近くにないなど、やむを得ない場合に限り使用してください。また、未就学児に使用する場合には、2枚のパッドが触れ合わないよう特に注意してください。
■添付文書を必ずお読みください。
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キヤノンマーケティングジャパン株式会社

本社/東京都港区港南2-16-6

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海猫ふれんず

八戸市出身の女性3人による情報発信ユニット。八戸圏域へのUIJターンを目的とし、オンラインイベントの開催や八戸市の市民活動奨励金制度を活用したワークショップなどを開催。