前編に続き、八戸市に本社を構える〈アンデス電気〉に来ております。
かつてはラジオの選局装置やテレビ・ビデオのアナログチューナーの生産規模世界一だったとか、世界の7〜8割ものテレビチューナー/モジュレーターの生産を行っていたとか、日本で最初に結核菌を死滅分解させた装置をつくったとか。ものすごい会社であることをご紹介してきました。
そして、同社がつくった空気清浄機は新幹線などでも採用されているらしい、というのはわかったのですが、実際にどれほどの性能を持っているのでしょうか……?
実験と工場見学を通して、そのすごさをお届けします!
【実験その1】煙が充満した喫煙室を『バイオミクロンサークルPRO』できれいにできるのか!?
今回は、2種類の実験を行うことに。まずは、前編で紹介した『バイオミクロンサークルPRO』を使って、煙除去実験。本社内の喫煙所を利用して、空気をどれだけきれいにしてくれるのか、実験してもらいます。
こちらは普段から社員のみなさんが利用している喫煙所。中に『バイオミクロンサークルPRO』と煙発生装置を設置し、入り口をビニールとテープで塞いで、密閉します。
煙発生装置をオンにして、煙を充満させていきます。白い煙がもくもくと立ち込め、みるみるうちに喫煙所内は真っ白に!
『バイオミクロンサークルPRO』どこいった? と、姿が見えないほどもくもく。本当にここから、すべての煙を吸い取ってくれるのでしょうか? それではスイッチをオン!
部屋の電気を消して、煙が反射しやすいレーザーを縦方向に当てて、煙の流れを見ていきます。
あっ!? 煙じゃない空気の流れがありますよ!
これは商品下部にある360度の吸込口から吸い込まれた煙が、きれいな空気となって円を描いて広がっている光景なのだそう。
縦向きではわかりにくいので、今度はレーザーを横にしてもらいました。
あ、円だ! 本当に円だ!!
ものすごい勢いで煙を吸い続ける『バイオミクロンサークルPRO』を、眺めながら待つこと約1分半。
あっという間に元通り……! レーザーに映る煙が消えました。さすが、集塵能力99%以上を備える『バイオミクロンサークルPRO』。まいりました!
【実験その2】光触媒の力で臭いを除去! アンモニア臭は消えるのか!?
次は、『バイオミクロンサークルPRO』に搭載されている光触媒の消臭効果を体感する実験です。
無臭の瓶を2つ用意し、同じ量のアンモニアのガスを注入するのですが、片方だけ光触媒を入れて蛍光灯の光を当てます。
みなさんご存知の通り、アンモニアは劇物に指定されるほど、特有の強い刺激臭を放つ気体。気を失った人を起こすための気付け薬として使用されていることもあるほど。
まずは光触媒の入っていない瓶から嗅いでいきます。
工学博士の工藤主幹技師さんより、「瓶に鼻をあてて一気に吸い込むのではなく、手であおぐようにしてゆっくり吸ってみてくださいね」とアドバイスが。
慎重に、適度な距離に瓶を持っていき、手であおぐと……
「くっっっっっっっさ!!!!!!!!!!」
ここが取材先の会議室だなんて関係なく、大声で叫んでしまいました。本当にくさい。この顔でおわかりいただけると思うのですが、アンモニア独特の鼻を切り裂いていく臭い……、マジでくさい……。
次は、蛍光灯の光を当てた光触媒が入った瓶です。正直、さっきの臭いのあとだと怖気づいてしまいますね。
すると沼尾常務から、「思いっきり深呼吸してみてください」との指示が。
信じますよ? 信じますからね?? 意を決して……、嗅ぎます。
んん?(もうひと嗅ぎ)
くさくない!! くさくないよ!!! やらせじゃないよ、本当だよ(笑)!!!!
この光触媒の働きが、空気清浄機の中で行われているんですね。
でも、どうして臭いをとることが可能なのでしょうか? 工学博士の工藤主幹技師に聞いてみました。
「光触媒は紫外線に当たると、臭いや菌といった有機物を引きつけくっつける力と、それを分解する力の2つが働きます。そうすることで、アンモニアの臭いさえも除去してしまえるんですね」
従来の空気清浄機では、臭いをくっつける力のみが働き、分解までには至らないのだそう。なるほど、光触媒を導入することで、臭いの元から絶つ空気清浄機になるんですね!
また、光触媒は洗って繰り返し使うことができるため、フィルターの交換が不要。無駄なゴミを増やさないことは環境にもよいですね。
あらためて、〈アンデス電気〉の技術力の高さに感服しました! こんなに素晴らしいものを、自分の地元企業が手がけていると思うと、非常に嬉しくなってしまいますね。
【工場見学】一つひとつ手作業で組み立て。
『バイオミクロンサークルPRO』がどのようにつくられているのか、工場見学をさせてもらいました。この歳になると工場見学をすることもほとんどないので、非常にわくわくしています!
〈アンデス電気〉の商品は、そのほとんどが社員さんの手によって製造されています。
「工場」と聞くと、大きなラインに人が大勢並んでいる様子を想像しますが、同社の工場は屋台式。多品種の商品を製造しているため、一人がひとつの工程を繰り返すのではなく、全員が、同じ作業ができるように研修を行っているのだそう。
この日は、『バイオミクロンサークルPRO』を完成させる作業を見学させてもらえました。
生産工場の1階は、表面実装(電子基板の表面にICチップなどの電子部品を取り付ける生産機械)フロアとなっており、製品を動かす(稼働、操作、制御等)ための「電子基板」を製作する作業が行われています。
その後、2階でそれぞれのパーツを組み立て、完成品へ。組み立てだけで1時間ほどかかるそうです。
おお……! 未完成品がたくさん並んでいる!
一つひとつ丁寧に、手作業で完成させていきます。
各持ち場には “認定者” がいて、その方の点検を受けて製品が完成となるのだそう。
常にお客様が使うことを考え、不良品が出ないよう細心の注意を払ってつくっているんですね。その品質だからこそ “Made in Japan(青森)” なんですね!
ちなみに、組み立て工場のほかに、加工センターも見学させてもらいました。建物の名前がレトロで、非常にかわいいフォント! ここでは、金属加工や研磨などをおこなっているそうです。
バリエーション豊富すぎる商品ラインナップ!
ところで、〈アンデス電気〉ではバリエーション豊富な商品開発を行っています。メーカーとして、どのような商品をつくっているのか、見せてもらいました。
まずは監視カメラ付き直管LEDライト。主に電車などに設置されています。
次はLEDライト。こちらのLEDライト、特許を約半年で取得できたというほど、稀有なライトなのです。何が珍しいのかというと、光が360度方向に光っているという点です。
通常のLEDライトは、壁側(天井側)のほうが暗くなっているそう。確かに文字が暗い。知らなかった!
〈アンデス電気〉のLEDライトは、壁(ウラ)側まで明るい!
しかも、明るいだけではなく、AC・DC・非常の3つの電源に対応しています。主に電車等で利用されているそうなのですが、70Vを切っても明るさを保っていられるため、どのような状況でも乗客が安全に退避できる環境をつくることができるLEDライトなのです。
LEDの読書灯も。LEDというと、通常白っぽい光のイメージが強いですが、ハロゲンランプのような色合いに加工しているそう。旅客鉄道やSL列車などで使われているらしいですが、味わい深い雰囲気で感動的です。私もその電車に乗ってみたい!
オゾン消臭装置。なんと、上越新幹線を走る『とき』以外の車体のほとんどに採用されている消臭機なんだとか! 新幹線という密閉された車両空間の中で出入口通路の壁側に設置されたゴミ箱や男性用トイレ内の天井は、オゾンによる酸化作用で強力に消臭しているそうです。 スゴイ…
最後に紹介するのは、ダウンライト。こちらはすでに販売が終了していますが、東日本大震災があった直後に製造したダウンライトなのです。
復興の役に立ちたいという思いで “Made in 東北” になるよう部品関係は東北から、梱包材は宮城県気仙沼市から集めたそう。当時は主にパチンコ屋さんに導入されることが多かったようです。
そのほかにも、ここでは紹介しきれなかったほどの製品、部品、技術を持っている〈アンデス電気〉。うーん、もはや「すごい」以外の語彙が見つかりません!
安定した雇用を生み出し、地元を支える企業に。
今日一日で〈アンデス電気〉の歴史、自社製品、工場見学とたくさんのことを学ばせていただきました! 設計・開発から製造・販売までを一貫して行うことができる〈アンデス電気〉ですが、それには、青森県ならではの背景があるのだそう。
前編でも紹介した通り、もともと受託加工のみを行っていた同社は、自社収入を得るために空気清浄機をつくりはじめました。しかし、その目的は収入のみではありません。
〈アンデス電気〉安田年孝社長は、こう話します。
「青森県は、農業が盛んに行われていました。冬になると、多くの農家が出稼ぎに行くために地元を離れ、また寒さもあいまって、地域の元気が損なわれていました。そこで、一連の流れができる企業になれば、地域の農家に安定した職場を提供できるのではないかと考えました」
ISO(国際標準化機構)の国際的な基準の認証も、青森県内で初めて取得した企業であり、はやくから地元での持続可能な会社経営に目を向けて活動されていた会社なのです。
地域を盛り上げることができるのは、紛れもなくその地域の人たちだと思います。ひとりでできることは少ないけれど、世界規模でこんなに活躍している企業が身近にあるということを知っていくのも、地元を盛り上げる一助になると思います。
「私たち金入も、『直耕インスピレーション』を通じ、多くの地元で活躍している企業や製品を発信していきたいと思います!」と、〈金入〉の金入健雄社長。
これからも、共に地元を盛り上げていくために。両社長が固い握手を交わしました。
【おまけ】社食をいただきました!
取材終了後、〈アンデス電気〉の社食にお邪魔してきました(笑)。
本日のメニューはハヤシライス! 毎週金曜日はカレーライスかハヤシライスなのだそう。
おいしー! たくさん学ばせてもらったあとのご飯は最高ですね。食べながらふと目線をうつすと……。
あっ、ここにも「バイオミクロン」が!
どおりで、食堂独特の匂いがあまりしないなと思っていたんですよ。さすがです(笑)!
PLACE
アンデス電気株式会社
青森県八戸市桔梗野工業団地一丁目3番1号
TEL 0178-20-2811
FAX 0178-20-2316
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海猫ふれんず
八戸市出身の女性3人による情報発信ユニット。八戸圏域へのUJIターンを目的とし、オンラインイベントの開催や八戸市の市民活動奨励金制度を活用したワークショップなどを開催。