東北らしさってなんだろう?

土地に根付いた生き方ってなんだろう?

東北にデザインは必要なのだろうか?

過去の東北デイベント

令和元年に産声をあげたプロジェクト『東北デ、~東北で、デザインするということ~』は、東北のデザイナーが関わる商品を、東北スタンダードマーケットの店舗で展示・販売するという企画から始まりました。それをきっかけに、東北に深く根付き、たくましく暮らし生きるデザイナー1人ひとりを旅してゆくような“出会いの場”として、小さくも濃厚な活動を続けてきました。

『東北デ、』が動き始めてから5年を迎えた2024年。東北という土地で泥臭くデザインに向き合う、6県のデザイナーたちを一冊にまとめた『東北デ、』が完成。そして、2026年。新しいメンバーが加わり、ますます、ほとんど、すべての人に読んで欲しい。適度にアホで、程々マジメな、デザイナーたちの本音の記録集『続・東北デ、』が誕生しました。

書籍一覧
左から、プロジェクトの原点ともなった『秋田デ、』(2019年刊)、『東北デ、』(2024年刊)、『続・東北デ、』(2026年刊)。

『東北デ、』メンバー

青森|佐々木 遊、豊川 茅
秋田|澁谷和之、後藤 仁
岩手|阿部拓也、スズキケンイチ
山形|吉野敏充、冨樫シゲトモ
宮城|横塚明日美、伊藤典博
福島|髙木市之助、西山里佳、小池晶子

過去のイベント集合写真

そして今や、東北で泥臭くデザインに向き合う6県のデザイナー計13名が、東北のデザイナーが集う活動体『東北デ、』として東北各地に馳せ参じ、適度にアホで、程々マジメに、デザインをしたりイベントで語り合ったりしているわけなのです。

……と、前置きがすっかり長くなってしまいました。

『東北デ、~東北で、デザインするということ~』が生まれるきっかけとなった企画の舞台〈東北スタンダードマーケット〉を運営する、私たち〈金入〉。その本社がある、ここ青森県八戸市に、この秋『東北デ、』のメンバーが大集合。2026年9月5日(土)と6日(日)の2日間、煩悩まる出し企画「スナック 東北デ、」が開催されました。

当日集合写真
一夜限定「スナック東北デ、」を営むママ&チーママたち。

5日の夜は、お酒を片手に悩みを語り合う、一夜限りのスナック。翌6日は会場を〈八戸ブックセンター〉へ移し、東北でデザインに携わる人たちが一日をかけて言葉を交わすリレートーク。

“適度にアホな夜の時間”と、“程々マジメな昼の時間”。

雰囲気の異なる二つの場で交わされたのは、仕事やデザインの話だけではありません。人生、家族、恋愛、これからのこと。普段は胸の内にしまっているような悩みや迷いまで、“煩悩”としてさらけ出し、語り合う2日間となりました。

スナック『東北デ、』、デザイナーが一夜限りの「ママ」に。

煩悩まみれなお客様のご来場を、心よりお待ちしております。
さあ、おかえりなさい、おかえりなさい。

——澁谷和之ブログ『泣いた“なまはげ”の天気読み』より
イベント会場pi

9月5日の会場は八戸市鳥屋部町の〈MUSIC BAR+Gallery [Pi!]〉。この夜、東北6県から集まったデザイナーたちは、それぞれに趣向を凝らした“ママ”や“チーママ”へと姿を変えました。《夜の帝王 遊》《ニューロック 反抗期》《赤い河童 あべ》《たかじいのばぁ PARIS》など、店名も装いも個性豊か。

イベント看板

さすがはデザイナー。それぞれのお店には看板も用意されていました。

使われている色も書体もまったく違うのに、どれもひと目で「スナックらしい」と感じられるのが不思議です。この“スナックらしさ”は、いったいどんなデザインの共通点から生まれているのでしょうか。

ショップカード
この夜のためにつくられたショップカード。
出演デザイナー
今回“ママ”や“チーママ”へと変身するのはこちらのメンバー。
スナックといえばやっぱりマッチ。スナック『東北デ、』のオリジナルマッチまで用意されており、世界観のつくり込みが半端ない!
スナックといえばやっぱりマッチ。スナック『東北デ、』のオリジナルマッチまで用意されており、世界観のつくり込みが半端ない!

来場者はグラスを片手に、気になるママのもとへ。仕事や経営、家族、恋愛、デザインについてなどそれぞれが抱えてきた“煩悩”を打ち明けます。悩みを聞くのは、日頃から誰かの思いや課題に向き合い、それを形にする仕事をしているデザイナーたちです。ただし、この夜は「デザイナー」としてではなく、一人の「ママ」として来場者を迎えます。

左から、《スナック コイケ》ママ:小池晶子(福島)/《たかじいのばぁ PARIS》ママ:髙木市之助(福島)/《ごきげんスナック 明日美》ママ:横塚明日美(宮城)
左から、《スナック コイケ》ママ:小池晶子(福島)/《たかじいのばぁ PARIS》ママ:髙木市之助(福島)/《ごきげんスナック 明日美》ママ:横塚明日美(宮城)
写真右《スナック 先生あのね♡》ママ:伊藤典博(宮城)
写真右《スナック 先生あのね♡》ママ:伊藤典博(宮城)
《夜の帝王 遊》ママ:佐々木 遊(青森)/《毒針 ケンちゃん》ママ:スズキケンイチ(岩手)/《ニューロック 反抗期》ママ:西山里佳(福島)
左から、《夜の帝王 遊》ママ:佐々木 遊(青森)/《毒針 ケンちゃん》ママ:スズキケンイチ(岩手)/《ニューロック 反抗期》ママ:西山里佳(福島)

名刺を交換し、仕事について語り合う場とは少し違う。カウンターを挟み、お酒を飲みながら向き合うことで、相談する側も、相談される側も、普段より少しだけ肩の力を抜いて話すことができたのかもしれません。

すぐに答えの出る悩みばかりではありません。それでも、誰かに話し、相手の言葉を受け取るうちに、凝り固まっていた考えがほぐれたり、自分でも気づいていなかった気持ちが見えてきたりします。

真面目な話も、にぎやかな笑い声も。さまざまな会話があふれた会場の様子。
真面目な話も、にぎやかな笑い声も。さまざまな会話があふれた会場の様子。
みなさんが持ち寄った東北各地のおつまみやお菓子
みなさんが持ち寄った東北各地のおつまみやお菓子。
東北各地のお酒も大集合!
東北各地のお酒も大集合!

会場のあちこちで交わされていたのは、「相談する人」と「答える人」という一方向のやりとりではありませんでした。一つの悩みから話が広がり、いつの間にかママ自身の経験が語られ、ときには隣にいた人まで会話に加わっていきます。悩みを入り口に、人と人とがつながっていく夜となりました。

《高級パブ 和布蕪(めかぶ)》ママ:冨樫シゲトモ(山形)
《高級パブ 和布蕪(めかぶ)》ママ:冨樫シゲトモ(山形)
《アートスナック ゴト-》ママ:後藤 仁(秋田)
《アートスナック ゴト-》ママ:後藤 仁(秋田)

《赤い河童 あべ》ママ:阿部拓也(岩手)
《赤い河童 あべ》ママ:阿部拓也(岩手)
キャプ:《おせっかい処 澁屋》ママ:澁谷和之(秋田)/《スナック 吉乃》ママ:吉野敏充(山形)
《おせっかい処 澁屋》ママ:澁谷和之(秋田)/《スナック 吉乃》ママ:吉野敏充(山形)

誰かが軽口をたたけば、どこかのママがすかさず茶々を入れる。真面目な相談のはずが、いつの間にか笑いに変わっている。そんな時間が、日付をまたぐまで続きました。

「デザイン愛」が灯る夜。
「デザイン愛」が灯る夜。
お悩み掲示板でママ&チーママに相談することができます。
お悩み掲示板でママ&チーママに相談することができます。
左側《呑みスケ はる菜》ママ:佐藤春菜(岩手・ライター)も本日は特別出勤!
左側《呑みスケ はる菜》ママ:佐藤春菜(岩手・ライター)も本日は特別出勤!

悩みときちんと向き合うことも、ときには笑い飛ばすことも。どちらも、私たちが生きていくために必要なことなのかもしれません。

「適度にアホな夜の時間」——その言葉どおりの、煩悩まる出しの一夜となりました。

この日の賑わいを写真に収めてくれたのは、《人力プリクラ イトウ》ママ:イトウタカムネ(岩手)
この日の賑わいを写真に収めてくれたのは、《人力プリクラ イトウ》ママ:イトウタカムネ(岩手)

一夜明けて、“程々マジメな昼の時間”へ

トーク1a
トークショー

翌9月6日は、八戸ブックセンター「読書会ルーム」でトーク『東北デ、』が行われました。

前夜のにぎやかなスナックから一転、この日は“素面”のデザイナーたちによるリレートーク。出演者と司会者が入れ替わりながら、全4ターンにわたって話をつないでいきます。

会場には、『東北デ、』のこれまでの活動を記録した書籍なども並びました。来場者は自由に出入りしながら、それぞれの土地で活動するデザイナーたちの言葉に耳を傾けます。

トーク中の澁谷さん
昨日のママの余韻が、まだどこかに……。話し方にも、ほんのり名残が感じられます(笑)。

トークの話題は、デザインの仕事や地域との関わり、それぞれの活動の背景など。さらに、各自が最近なぜか気になった写真や画像、本を紹介し、そこからふと生まれた問いを共有していきます。

ターン①|司会:澁谷和之(秋田)/トーク:後藤仁(秋田)、髙木市之助(福島)、横塚明日美(宮城)
ターン①|司会:澁谷和之(秋田)/トーク:横塚明日美(宮城)、髙木市之助(福島)、後藤仁(秋田)

紹介されたのは、ビルの階段で見つけたデザイン性のある照明、車で通り過ぎた一瞬に目に留まった歯科医院の看板、海外で活動する日本人を捉えた写真集など。

何気なく通り過ぎてしまうような階段にも、空間を格好よく、上質に見せるための工夫が施されている。その細部から、人を迎える場をつくり込もうとする人のこだわりや熱量が感じられ、うれしくなったという話もありました。

ターン②|司会:佐々木 遊(青森)/トーク:伊藤典博(宮城)、スズキケンイチ(岩手)、西山里佳(福島)
ターン②|司会:佐々木 遊(青森)/トーク:伊藤典博(宮城)、西山里佳(福島)、スズキケンイチ(岩手)

身の回りで見つけた何気ない風景から、仕事や暮らし、地域、社会へ。ひとつの話題をきっかけに、会話は思いがけない方向へと広がっていきました。用意されたテーマについて順番に発表する講演会というよりも、誰かの言葉を受け取った人が、そこに自分の経験や考えを重ね、次の話題へと手渡していく。まさに“リレートーク”と呼ぶにふさわしい時間です。

午後はスタイルを変えて! リラックスした雰囲気で、紙の上でもトークをしていきます。
司会:西山里佳(福島)/トーク:阿部拓也(岩手)、小池晶子(福島)、冨樫シゲトモ(山形)
ターン③|司会:西山里佳(福島)/トーク:阿部拓也(岩手)、小池晶子(福島)、冨樫シゲトモ(山形)

青森、岩手、秋田、宮城、山形、福島。同じ東北にありながら、暮らす環境も、地域との関わり方も、仕事のつくり方もそれぞれ異なります。一方で、土地に根ざして働くからこその迷いや、人とのつながりから仕事が生まれていく感覚など、県境を越えて重なる部分も見えてきました。

ターン④|司会:冨樫シゲトモ(山形)/トーク:佐々木遊(青森)、吉野敏充(山形)、澁谷和之(秋田)
ターン④|司会:冨樫シゲトモ(山形)/トーク:澁谷和之(秋田)、佐々木遊(青森)、吉野敏充(山形)

この日のトークから伝わってきたのは、デザイナーの皆さんが日常をどのような視点で捉え、そこから何を問いとしてすくい上げているのか、ということでした。普段何気なく目にしている場所や日々の営みも、誰かの視点を通すことで、いつもとは少し違った姿を見せてくれます。

おかげさまで、旅はまだまだ続きます。

デザイナーたちの後ろ姿

デザインというと、専門的で、どこか格好よく整えられたものを思い浮かべるかもしれません。しかし、『東北デ、』の活動に触れていると、デザインはもっと日常に近く、人の暮らしや感情と切り離せないものなのだと感じます。それぞれの土地で生きるように働く『東北デ、』の皆さん。その姿は、東北という土地に足をつけて生きるとはどういうことなのかを、あらためて考えるきっかけを与えてくれました。

仕事と生活をきっちり分けるのではなく、目の前の人と関わり、自分たちが暮らす場所を面白くしていく。前夜のスナックもまた、仲間との関係のなかから生まれた“楽しくなるためのデザイン”のひとつだったのではないでしょうか。

悩み相談

真面目に問いを交わすことも、くだらない話で目いっぱい笑うことも、その根にあるものは同じなのかもしれません。つくり手も、そこを訪れた人も一緒になって楽しむ。その時間と空間そのものが、人が人らしく生きるためのデザインのように思えました。

自分たちが暮らす場所は、自分たちの手でもっと面白く、楽しくしていくことができる。そのことを、夜のスナックと翌日のリレートークを通して、あらためて感じた2日間でした。

次回の『東北デ、』は、10月12日(月・祝)に、岩手県紫波町で第12弾となる行商トークを開催いたします。さらに11月には、ここから派生した新たなイベントも生まれるかも……?

『東北デ、』の旅はこれからも続きます。これから、どんな土地で、どんな人と言葉を交わしていくのでしょうか。みなさん、本当にありがとうございました!

東北デ、 〜東北で、デザインするということ〜 さんの画像

鈍臭いけど、あったかい。適度にアホで、程々マジメ。

東北デ、 〜東北で、デザインするということ〜

ほとんど、すべての人たちに読んでほしい。東北の地に暮らすデザイナーが語る「本音の記録集」。

『東北デ、』の活動や、そこに集うデザイナーたちの言葉をもっと知りたい方は、書籍『東北デ、』『続・東北デ、』もぜひご覧ください。東北スタンダードマーケット公式オンラインショップにてご紹介しています。
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